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最高裁判所第三小法廷 昭和23年(オ)42号 判決 1948年11月09日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

本件上告理由は別紙記載のとおりであつて、これに対する判断は次のとおりである。

本件において仮処分債務者たる被上告人は、仮処分により保全せらるべき実体上の権利の存否及び仮処分の理由の有無を争つているのではなく、民事訴訟法第七五九条の特別の事情のあることを主張して仮処分の取消を求めているのである。従つてこれが当否を審理するについては、仮処分により保全せらるべき実体上の権利の存否及び仮処分の理由の有無について判断する必要はなく、もつぱら仮処分取消の特別事情の有無を判断すべきであり、且つこれを以て足るのである。而して原審の認定した事実によれば、本件仮処分が維持されないことにより上告人の蒙ることあるべき損害は、結局金銭を以て償い得られるものであることは明瞭だから、原審が、被上告人において保証を立てることを条件として、該仮処分を取消す旨の第一審判決を維持したのは、結局正当である。

上告人の「本件田地を被上告人に返還すべき協定(賃貸借の解約)は、県知事の許可がないから無効である」と云う主張は、仮処分により保全せらるべき実体上の権利の存否に関する論議であつて、本件仮処分取消の特別事情の有無に関係のない事柄であるから、本件ではこれについて判断する必要はなく、原判決が右の主張を採用しなかつたのは当然である。論旨は理由がない。

よつて、民事訴訟法第四〇一条、第九四条及び第八九条により主文の如く判決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)

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